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2019.03.27

実録!がん経験者が語る「お金」のコト ~30代、2人の子育てをしながらがん治療を続けたB子さんの場合~


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「がん」と聞いても、自分には関係のない病気だと思っている人も多いのでは? ところが国立がん研究センターの調査によると、生涯でがんと診断される人の割合は、男性62%、女性は47%という数字が出ています(※1)。日本人のうち2人に1人は一生のうちに一度はがんにかかる時代と言えます。つまり、「がん」はもはや他人事ではない病気なのです。

特に女性の場合、30代から乳がんや子宮頸がん、40代に入ると子宮体がん、卵巣がんなど女性特有のがんにかかる割合が高くなります。つまり、若い世代でもがんに罹患する可能性が高いということになります。

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(※1)出典:国立がん研究センター「がん情報サービス」最新がん統計「がん罹患率~年齢による変化」 ※外部サイトに遷移します

手術入院費は差額ベッド代含め約58万円に

子宮がんにかかったB子さんのケースで、実際にがんの治療にはどれだけのお金がかかるのかを紹介していきましょう。B子さんは当時37歳、夫と10歳、2歳のお子さんを抱える共働きの家庭。

B子さんが子宮がんと診断されるきっかけとなったのは、何気なく訪れた区の婦人科無料検診でのこと。自宅近所の婦人科で、子宮頸がん検診を受診。細胞採取と超音波検査を行いましたが、「特に問題はなさそう」と言われました。ところが10日後の診断結果を待つ間、生理の際に異常な量の出血を伴ったため、今度は職場の近くの婦人科で検診。その結果、がん細胞が認められ、大学病院での再検査を勧められました。そして、大学病院での再検査で、「子宮体がん類内膜腺がん」と診断されたのです。

転院した当日と翌日にCTスキャンや心電図、MRI検査を行った結果、子宮、卵巣、リンパ節の一部を摘出する「広汎子宮全摘出術」を受けることが決まりました。がんと診断されるまでは健康でとくに変わったこともなく、がんにかかった親戚もいなかったB子さんにとっては、まさに思いもかけない告知でした。

手術前検診を進めている中で、入院期間については「手術で採取したがん患部の細胞を調べ終わるまで」と、1カ月ほど入院することが決定しました。「自分がまさか1カ月も入院するなんて・・・」。その時にとくに不安を感じたのは、やはり家族のこと。当時10歳と2歳の小さな子どもがいたため、入院中の子どもたちの世話や家事をどうするかで、とても戸惑ったと言います。夫と相談した結果、入院中は夫と実母が家事を負担してくれることになり、手術前の検査を経て、B子さんは手術入院しました。

入院に際しては、まだおとなしくしていられない小さな子どもも気兼ねなく病室に連れてこられるように、という夫の考慮で個室を希望。空き状況の兼ね合いで特別室への入院となり、治療費とは別に1日2万円の差額ベッド代がかかることに。

そのため、手術入院費は差額ベッド代を含めて約58万円となり、診断から退院するまでの1カ月の間に総額約62万円もの費用がかかりました。

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退院後も抗がん剤治療で6日間の入院治療を6回行う

B子さんは、手術後の病理検査の結果、さらに左卵巣の骨盤リンパ節への転移があることがわかり、最終的にはステージ3Cという重い診断が下りました。子宮、卵巣、リンパ節の手術を行ったことで、がんのすべてを摘出できましたが、再発予防としてすぐに抗がん剤治療が行われることに。がんの場合、がんを摘出したあとも、再発予防のために治療が継続されるケースは多く、ここがほかの病気とは異なる点と言えます。

もともとは病理検査が済むまでの入院ということでしたが、1回目の抗がん剤治療がそのまま行われることになりました。B子さんが受けた抗がん剤治療は、1回の治療で1週間入院し、それを3週間おきに6回行うというもの。そのため、延べ6カ月間の間、入退院を繰り返すことになりました。

このように入院が長期におよぶと費用が心配のもとになりえますが、「実録!40代、仕事を続けながらがん治療を続けたA子さんの場合」でもご紹介したとおり、高額な治療費がかかった場合には、健康保険の「高額療養費制度」により、1カ月の医療費負担額に上限が設けられています。たとえば入院治療費が1カ月に100万円かかった場合でも、月の自己負担は8万円ほどに収まります(会社員で標準報酬月額28〜50万円の場合)。ただしB子さんも利用した「差額ベッド代」については高額療養費制度の適用外。全額自己負担となりますので覚えておきましょう。

>実録!40代、仕事を続けながらがん治療を続けたA子さんの場合 の記事はコチラ

さらに、B子さんは勤務先の健康保険組合により「付加給付制度」が適用されました。付加給付制度とは、企業の健康保険組合により、組合員の1カ月の医療費自己負担額が決められていて、上限額を超えた分は払い戻しが行われるという制度です。B子さんの場合、同月1レセプト(病院が医療費の保険負担分の支払いを公的機関に請求するために発行する「診療報酬請求明細書」のこと)につき、医療費の自己負担額は上限が2万円までと決められていたため、超過分は払い戻され、経済的な負担はだいぶ緩和されたようです。

もちろん勤めている企業によって導入されているかは異なりますが、万一高額な医療費がかかった際には、こうした健康保険組合独自の制度が適用されるかどうかも、事前に調べておくと安心です。こうした公的医療保険ではカバーできない費用についても、自身で準備しておく必要がありそうです。

治療費以外の出費も大!家事負担に伴う費用が思いがけない金額に

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このように、公的医療制度や健康保険組合の付加給付制度により、治療費に関する負担は抑えられるケースもあります。ただ、B子さんの場合は治療費以外にも、子どもを抱える女性ならではの出費がありました。

入院中は、母親に会いたい子どもを連れて夫が頻繁にお見舞いに訪れていました。仕事帰りに、まだ2歳と小さかった子どもを連れての移動のため、タクシーを使うことが多かったそうです。病院を訪れた際は、そのまま病院で食事をすることも多く、夫と子どもの食事代で3万円、お見舞い時の家族のタクシー代が4万円ほどかかりました。家事に関しては夫と実母に頼ることができ、実母から食事の差し入れがあったものの、入院中に夫が買った惣菜代はざっと10万円程度になったと話します。

それでもB子さんの場合は、2歳のお子さんが保育園に通っていたこと、また、入院中の家事を夫と実母が分担してくれたため、家事に関する負担はこれだけの費用で抑えられました。親が遠方に住んでいるなどの事情で近くに頼れる存在がいない場合、幼い子どもを抱えながらのママの入院には、ベビーシッターや家事援助サービスを利用する費用が発生する可能性も十分考えられます。

また、リンパ節を切除したため、手術後は脚がむくみやすくなり、高価な弾性ストッキングが欠かせない生活に。そのほかにもウイッグや入院時の雑費などがかかり、治療費以外にかかった出費は、がんと診断された年で85万2000円にもなってしまいました。

B子さんは休職中、傷病手当金の支給を受けましたが、医療費とそれ以外の出費によりトータルで赤字となり、その分は貯蓄からカバーしたといいます。
入院費や治療費だけではなく、こうした公的医療保険ではカバーできない費用についても、自身で準備しておく必要がありそうです。

おわりに

このように、がんにかかった場合には、入院手術費のほかにも再発予防の治療費や、家事負担に関する費用など、公的医療保険ではカバーしきれない部分についても考える必要があることがわかります。

現在、B子さんは仕事にも復帰し、半年に1度の通院を続けながら、仕事・子育てに奮闘する毎日を送っています。そんなB子さんが語ったのは「がんに対する経済的な備えをしておけばよかった」ということ。

先ほどもお伝えしたとおり、日本人の2人に1人は一生のうちに一度はがんにかかるのが実状です。早期発見でお金や身体の負担を軽減することに加えて、もしものときのための経済的負担にも備えておくと安心と言えます。

取材協力

すわやまクリニック院長 田島厳吾(たじまげんご)
慶應義塾大学医学部卒業後、国立がんセンター勤務等を経て、目黒区ですわやまクリニックを開院。とくに乳腺外科に力を入れており、新聞等への執筆、漫画への監修を務めるなど、乳がんへの関心を高める活動を行う。自身のクリニックで地域医療に貢献する傍ら、乳がんなどの手術も行っている。

執筆者プロフィール

酒井富士子(さかいふじこ)
経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。 日経ホーム出版社(現日経BP社)入社後、「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。その後リクルートに入社。「あるじゃん」「赤すぐ」(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に「60代の得する『働き方』ガイド」(近代セールス社)などがある。

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